自分たちにしか製膜できない
高分子基材を生み出し、世界に供給したい。
入社のきっかけは何ですか?
B to B(法人向け)製品を扱うメーカーに関心がありました。B to Bの業界では、B to C(一般消費者向け)と比べて、製品の性能やコストといった技術者が生み出した価値がダイレクトに評価されます。実力主義の世界で自身の技術力を磨きたい思いがありました。
富士フイルムに対しては、もともと化粧品と写真フィルムのメーカーというイメージを持っていましたが、就職活動を機会に機能性フィルムやファインケミカルなどB to Bの製品を幅広く手掛けていることを知りました。生涯、たくさんの製品に携われることに魅力を感じ、入社を決めました。
普段どんな仕事をしていますか?
また、仕事をとおして大切にしていることは何ですか?
主な仕事は、各製品に求められる性能に応じて、樹脂の重合度、添加物組成や延伸条件を探索することです。マテリアル生産本部は、商品開発から生産までの幅広い業務を担う部署です。したがって、担当する製品を上市するまでのスケジュールによって、業務内容が変わります。例えば、開発初期の製品であれば、小型機でサンプルを作成しながら原理確認を進めます。
一方、生産が近い製品であれば、製造機で問題となっている品質不良の原因調査や、製造品のコストダウンなどが業務の中心となります。
こうした業務の中で私が大切にしていることは、目の前で起きた故障や品質エラーなどの問題を科学的に整理し、応用できるカタチまで体系化することです。製品の問題解決を検討している際、プロセス条件の変更により偶然良い結果が得られるなど、従来の知見で説明できない場面に遭遇することがあります。そういった場合でも、「なぜ改善したか」を科学的に説明できるように仮説を立て、小幅機などで検証を行い、本質的なメカニズムを把握します。自然現象を理解し、汎用技術に落とし込むことで、将来の別製品の開発に展開できるなど、組織の技術力が高まると考えています。
仕事をとおしてどんなときに
やりがいを感じますか?
問題の本質を明らかにして、技術的に解決することにやりがいを感じます。過去に、自分が担当する製品において、後工程の塗布部で深刻な故障が発生しました。
私は後工程の条件を基に、小型・中型機を活用して、故障を再現させる実験系を組み上げました。そして、基材の特性と故障の関係を徹底的に調査した結果、基材の微小な熱物性のムラが故障の原因であることを突きとめ、基材製造機の冷却部を改造することで、解決に導くことができました。本質をとらえて技術的なアプローチで改善することが、自身の存在意義だと思います。
思い出に残っている
エピソードを教えてください。
基材部門は機能性フィルムのサプライチェーン(原料の状態から商品として製造・供給され、使用されるまでの一連の流れ)においては上流工程にあたります。そのため、後工程で基材に起因する問題が発生すると、そこの担当者やお客さまから厳しいフィードバックをいただくことがたくさんあります。
しかし、過去に私が担当した製品で、お客さまから「良い基材をありがとう。おかげで助かったよ」という感謝の言葉をいただいたことがありました。その瞬間は、それまでの努力が報われた気がして、「もっとお客さまにとって価値が高い基材を開発したい」という気持ちが強くなりました。
仕事をとおして目指していることは何ですか?
それに向けて挑戦したいことは何ですか?
目指していることは、「富士フイルムでしか生産できない基材を生み出し、世界へ供給する」ことです。そのためには、後工程である塗布部門と密にコミュニケーション取り、基材に求められる品質や特性を徹底的に把握することが重要だと考えています。
富士フイルムの強さは、製膜機とさまざまな高機能塗布機の両方を所有しており、他社にはない一貫した高機能製品を開発できる点です。その強みを生かして、難しい商品開発や製造故障の改善に挑戦し、技術ノウハウを体系的に蓄積していく。それを積み重ね継承することで、富士フイルムの基材部門は強くなると信じています。
富士フイルムの魅力を教えてください。
若手に重要課題を任せてもらえる点です。入社して3年目に大きなコストダウンプロジェクトを任せてもらい、自信をつけることができました。課題を任せきりにする訳ではなく、先輩や上長が都度フォローしてくれる環境があります。責任ある課題を与えて成長を促すことが、当たり前の文化として根付いていると思います。また、ICT化が進み、在宅ワークができる環境が整備されています。そのため、仕事と家庭(子育て)を両立する働き方ができることも魅力の一つです。
就職活動中の方へのメッセージをどうぞ!
就職活動中は、徹底して自分と向き合ってください。そして、できる限りたくさんの会社を訪問して、自分が人生を懸けて何をしたいかを見極めてください。マテリアル生産本部では、専門性を問いません。というのも、大学の研究テーマが生産部の業務に直結する学生は稀だからです。また、富士フイルムには日々の業務を技術報告書にまとめる文化が根付いています。そのため、過去技術の蓄積を効率よく吸収できる環境が用意されています。さらに、OJT(実務を通じた訓練)期間が3年間設けられており、その間は周囲が手厚くフォローしてくれる教育制度が整備されています。